資 料
冒認商標出願について
海外進出の際に重要となる冒認商標出願についてご説明します。
1.冒認商標出願とは
禁止されている冒認商標出願とは、悪意のある「横取り商標出願」もしくは「先行権利の冒認出願」のことです。日本で登録している商標でも、外国で使用するとその国の商標権を侵害することになります。
日本で有名な商標であっても、その事実をもって他人による外国での商標登録を防ぐことはできないため、外国で自身の商標が他人に先取りされて海外進出の妨げとなるリスクもあります。よって、海外で先に商標登録をしておくことが何よりも大切になります。
2.中国での冒認出願
冒認出願に関する話題は特に中国で多いです。その原因についてご説明します。
(1)登録までの費用が安く、手続きが簡単
現在、中国では97.6%がオンライン出願となっています。このオンライン出願の導入により代理機構が出願を安価に請け負うようになり、出願に係る費用は代理機構を通しても1000元(約1.5万円)とかなり安価になっています。
また、AIが商標サンプルを作成し、提案してくれるサービスも登場しています。
(2)Made in Japanのブランドは中国で人気
中国では、品質面や安全面から有名ブランドや海外ブランドにこだわる人が増加しています。日本ブランド全般には「高品質、安心、安全」という良いイメージがあり、商標の中でも特にアパレルや雑貨、食品などで非常に高い人気があります。
(3)外国商標の保護が不十分
商標には属地主義・先願主義という規則があります。
・属地主義
知的財産権の効力は、その権利を認めた国の範囲内でのみ保護される
・先願主義
通常、先に出願された商標が優先的に登録される
こういった規則からの救済措置として、日本では「外国における周知商標と同一・類似であって、不正の目的をもって使用する商標」を拒絶理由とする規定が定められています。
一方、中国にそのような救済措置の規定はないため、外国商標の保護が不十分だと言えます。大量の商標出願がある中国で、外国で周知な商標かどうか、不正な目的を有しているかどうかを精査することは現実的でないため、今後もこの問題は続くと考えられます。
3.中国の商標の検索
中国商標局が提供するデータベース「中国商標網」を利用することで、実際に冒認商標が出願されているか確認することができます。基本的な使い方をご紹介します。
(1)中国商標網へのアクセス
中国商標網にアクセスし、ページ上部の「商标查询」又は「商标网上查询」をクリックします。「我接受」をクリックして、免責声明を受け入れます。
(2)中国商標網の検索メニュー
メニューの項目には以下のようなものがあります。
商标近似查询…図形、文字などから類似商標検索をする
商标综合查询…商標番号、商標、出願人名称などから商標の関連情報を検索する
商标状态查询…出願、登録番号を通じて、手続の状態を確認する
商标公告查询…商標広告を確認する
错误信息反馈…商標局にエラー情報をフィードバックする
商品/服务项目…商品及び役務表示を検索する
このうち、検索に係る「商标近似查询」と「商标综合查询」について詳しくご紹介します。
(3)商标近似查询 <商標類似検索> 商标近似查询又はアイコン部分(上の画像の赤丸部)をクリックすると、以下のような検索画面になります。赤星印のある項目は入力必須項目です。・国际分类<国際分類>
調査対象の商品・役務の国際分類の区分を半角数字で入力します。複数区分を一度に検索することはできません。
・查询方式<検索方式>、商标名称<商標名称>
検索方式を選択し、商標名称欄に調査したい商標の情報を方式に応じて入力します。
図形による検索は、図形の構成要素に対応する図形コードを半角で入力します。図形コードは5つまで入力することができ、半角の”,“でそれぞれの図形コード間を区切ります。図形コードは、下図赤丸部の虫眼鏡のマークをクリックして、別ウィンドウの図形コード表より検索対象の図形の条件に合致する一つ又は複数の図形コードを選択し、「加入检索」をクリックします。
(4)商标综合查询 <商標総合検索>
・国际分类<国際分類>
調査対象の商品・役務の国際分類の区分を半角数字で入力します。
・申请/注册号<出願/登録番号>
調査対象の出願/登録番号を半角で入力します。国際登録商標を検索する場合、出願/登録番号の前に半角の「G」を入力します。
・商标名称<商標名称>
調査対象の商標を簡体字、半角アルファベット又は半角数字で入力します。完全一致だけでなく、前方一致の商標も抽出されます。
・簡体字の申请人名称<出願人/商標権者>
出願人/商標権者の中国語名称又は中国語名称の主要部を簡体字で入力します。中間一致や後方一致のものは抽出されません。
・英語の申请人名称<英語の出願人/商標権者>
出願人/商標権者の英語名称又は英語名称の主要部分を半角の数字/英文字で入力します。
情報を入力後、「查询」をクリックします。
(5)商標の詳細情報
4.中国での冒認出願対策
実際に中国で自分の商標が冒認出願されているのを発見した場合の対策についてご説明します。 取ることができる法的対抗措置は登録広告の前か後かによって異なります。
(1)登録広告の前の場合:異議申立
初歩査定公告日から3ヶ月以内、異議申立が可能です。
(2)登録広告の後の場合:無効宣告請求、継続3年間不使用による取消審判
無効宣告請求は、通常商標登録が許可されて5年以内であれば請求可能です。ただし、著名商標についての悪意による冒認登録の場合はその制限を受けません。
継続3年間不使用による取消審判については、商標権者が商標の使用証拠を提出できない場合、または提出した証拠が無効とされ、且つ不使用についての正当な理由がない場合には 登録の取消が可能となります。
異議申立と無効宣告請求の主な理由
・使用を目的としない悪意による商標出願
・公知な外国の地名であること
・他人の同一の商品もしくは類似の商品について既に登録もしくは初歩査定された商標と同一もしくは類似すること
・地理的表示であること
・他人によって、先に使用された一定の影響局を有する商標を不正な手段により、先行登録したこと
・その他の著作権や商号件、意匠権、肖像権などの先行権利を侵害したこと
・法的代表者や代理人の関係または売買関係、委託加工関係などの業務往来関係による出願
・欺瞞的な手段またはその他の不正な手段により登録された商標
実際に法的対抗措置を取る際の注意事項
法的対抗措置をとる際は、証拠を集めておく事が非常に重要です。訴訟段階になってから新しい証拠を提出することは原則認められないため、多くの関連証拠を早めに提出しておく必要があります。 また、代理人費用や翻訳費用、証拠収集費用なども発生するため、ある程度の費用がかかることを頭に留めておいたほうが良いでしょう。
冒認商標に対して事前にとるべき防止策
最も有効なのは早期に商標出願をすることです。また、出願の際に日本語や英語と同時に漢字での商標も出願することや、指定役務の範囲を予定しているビジネスのものよりも幅を広げて近しい商品の役務にまで出願をすることが冒認出願を防止することにつながります。また、中国での商標の検索を用いて、自分の商標が冒認出願されていないかどうか調査、監視することや、中国国内で商標が著名商標である証拠を持続的に収集することも重要です。
吉川国際特許事務所について
事務所内には多数の中国語翻訳スタッフが在中しております。翻訳者、技術者、チェッカーの三位一体で高品質な翻訳をいたします。中国出願のご活用は弊所にお任せください。
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